マイクロプラスチックとは
「マイクロプラスチック」という言葉がよく使われるようになったのは2004年のサイエンス誌に「Lost at Sea: Where Is All the Plastic?」というタイトルの論文が出てからです。近年、国外ではヨーロッパーを中心にマイクロプラスチックの認識が浸透しています。日本国内では、2018年後半より、マイクロプラスチック関連のニュースが頻繁に報じられるようになり、関心が高まりつつある状態です。
《目次》
- マイクロプラスチックの定義
- マイクロプラスチックの分類
- マイクロプラスチックのもとになる5大プラスチック
- マイクロプラスチックによる被害
- マイクロプラスチックによる海洋汚染
- 食物連鎖によってマイクロプラスチックが人間の体内へ
- マイクロプラスチックは海洋汚染だけではない
1.マイクロプラスチックの定義
石油を原材料とするプラスチックは世界で年間約3億トンが生産されます。
この量は、石油産出量の8%を占めますが、そのうち半分は容器包装に使われています。プラスチックは自然分解されずに半永久的に残るという特徴があります。ポイ捨てやゴミ処理施設へ輸送される過程で環境中に出てしまった使用済プラスチックは、雨で流され最終的に海に流れ着きます。紫外線や波の影響で劣化していったもののうち、5mm以下のサイズになったプラスチックのことをマイクロプラスチックといいます。

2.マイクロプラスチックの分類
マイクロプラスチックは一次プラスチックと二次プラスチックの二つに分類されます。
- ①一次マイクロプラスチック(primary microplastics)
- プラスチック製品を製造するための原料として使われる米粒大のプラスチック粒(レジンペレット)や洗顔料・ボディソープ・歯磨き粉などに使われるスクラブ剤には、小さなビーズ状のプラスチック原料が使用されています。これらを一次マイクロプラスチックといいます。 一次マイクロプラスチックは微細なため回収が難しく、製品化した後の対策や自然環境中での回収は困難です。誤飲によって生物・生態系への影響も懸念されています。
- ②二次マイクロプラスチック(secondary microplastics)
- 環境中に流れ出たプラスチック製品が外的要因で劣化することで発生するのが二次マイクロプラスチックです。 使用済みプラスチックはポイ捨てやゴミ処理施設へ輸送される過程で環境中に出てしまったあと、雨で流されて最終的に海に流れ着きます。海を漂流するプラスチックごみの多くは、長いあいだ太陽の紫外線によって劣化してもろくなり分解されます。また、プラスチック同士がぶつかったり、波の作用や岩・砂によってすり減らされたりと物理的な摩擦で砕けて小さくなっていきます。


3.マイクロプラスチックのもとになる5大プラスチック
プラスチック製品が開発された当初は画期的なもので、世界でも過去20年のあいだに大量に生産され続けてきました。プラスチックの種類は100種類以上で、生活用品などに使われる5大プラスチックは生産量のおよそ75%を占めています。
- ポリスチレン(PS)…ハンガー・食品用トレイ・プリンターなど
- ポリエチレン(PE)
- 高密度ポリエチレン(HDPE)…バケツ・洗剤ボトル・屋外玩具・灯油タンクなどト
- 低密度ポリエチレン(LDPE)…レジ袋・ラップ・紙パック飲料などの内外面など
- ポリ塩化ビニル(PVC)…クレジットカード・ホース・水道管・合成皮革など
- ポリエチレンテレフレタート(PET)…ペットボトル・卵パック・包装フィルム・衣類の繊維
- ポリプロピレン(PP)…ストロー・ペットボトルキャップ・文具・医療器具など
4.マイクロプラスチックによる被害
- 科学的被害
- プラスチックに使われる添加物には有害性が指摘されるものもあり、マイクロプラスチックになっても残留します。また石油から作られるプラスチックは汚染物質を吸着しやすい性質があるので、海を漂う間に海洋生物が汚染物質(※PCB,DDP)を吸収して環境に悪影響を与えています。 ※PCB=ポリ塩化ビフェニルDDP=ジクロロジフェニルトリクロロエタン 農薬、殺虫剤のこと
- 物理的被害
- 海鳥の場合、プラスチックが消化器官が詰まったり、消化器官の内部がプラスチックで傷つけられて栄養失調の原因になるなど、大きな脅威となっています。プラスチックのサイズが小さいことでプランクトンや魚介類が摂食(誤飲)し、体内に蓄積します。※「生物濃縮」によって私たち人間の健康にも影響することが懸念されています。
- ※生物濃縮とは ある種の科学物質が生態系の食物連鎖を経て生物体内に濃縮されていく現象のこと。代謝を受けにくい科学物質は。尿などで体外に排出されにくく、生物体内の脂質中などに蓄積していく傾向にあります。


5.マイクロプラスチックによる海洋汚染
マイクロプラスチックは5㎜より小さいプラスチックのかけらです。マイクロプラスチックはとても小さいものなので、たとえば海岸で拾い集めて回収しようとしても現実的には不可能に近いです。一方、プラスチックの使用量は世界中で増えつづけています。
非常に小さいマイクロプラスチックは、海に住む生物がゴミをエサと間違えて食べてしまいます。食物連鎖の中で、魚の体内に有害物質が濃縮してきたマイクロプラスチックの場合、一部は魚を食べた鳥や人間の脂肪に溶け込んで体内に入ってきて蓄積されてしまい悪影響を及ぼすことが考えられます。
6.食物連鎖によってマイクロプラスチックが人間の体内へ
今後マイクロプラスチックが増え続けていけば、それに含まれる有害化学物質が人体にどう作用してくるか、という点も問題となります。
海洋環境へのプラスチックの排出源は、使い捨てプラスチック容器の破片や漁業用具の廃棄物やマイクロビーズ・化学繊維・タイヤの磨耗などが発生源とされています。
マイクロプラスチックは、人が生み出したプラスチック製品やプラスチックごみとして捨てていたものなので、プラスチック製品の消費が増えれば増えるほど環境中に増えていくのではないかと懸念されています。
マイクロプラスチックによる海洋汚染は、年々深刻化していることがわかっており、ごみ発生量などをもとに予測した結果によると、何も手を打たなければ20年後には海へのプラスチック流入量は10倍に、そして30年後にはプラスチックの量は魚の量を超えてしまうとも言われています。
7.マイクロプラスチック問題は海洋汚染だけではない
マイクロプラスチックによる被害は陸上でも発生しています。
日常生活をする上で、私たちは多くのプラスチック製品に囲まれています。こうしたプラスチックへの依存が知らず知らずのうちに環境に与えている影響は大きくなってきています。
タイヤの磨耗、洗剤のマイクロビーズ、プラスチック容器や器具の破片、廃棄物、化学繊維などが発生源とされています。
商品を選択する私たち消費者が、自然保護や海洋保全のために、日々の生活の中で、どうしたらプラスチックを減らせるのか、工夫していく必要があるようです。
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